リウマチ内科の特徴
リウマチ内科では、全身の関節や筋肉などに痛みやこわばりを来すリウマチ性疾患の診断・治療を行っています。リウマチ性疾患には幅広い疾患が含まれますが、その中でも特に関節リウマチ、全身性エリテマトーデスをはじめとする免疫異常・炎症制御異常を伴ったリウマチ性疾患、すなわち膠原病の診療を主として行っています。また膠原病は、さまざまな内臓に障害を来しうる全身性疾患であることから、必要に応じて各臓器別の内科診療科、皮膚科、整形外科など病態上関係する診療科と密に連携し診療に当たっています。
当診療科において扱う主な疾患
関節リウマチ、悪性関節リウマチ、若年性特発性関節炎、脊椎関節炎(強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、炎症性腸疾患関連関節炎など)、成人スチル病、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症(強皮症)、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、混合性結合組織病、血管炎症候群(高安動脈炎、側頭動脈炎、結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、シェーンライン・ヘノッホ紫斑病、クリオグロブリン血症性血管炎など)、リウマチ性多発筋痛症、ベーチェット病、抗リン脂質抗体症候群、再発性多発軟骨炎など
寛解到達・維持を目標とし、持続可能な関節リウマチ治療を目指します
関節リウマチは、関節を主座とした全身性炎症を来す疾患で、日本では約70万人(成人の約1%)の方が罹患している比較的ありふれた疾患です。初期には関節の痛みや腫れ、こわばりで発症し、放置すると炎症により徐々に関節構造が破壊され、関節に変形を来し、身体の機能が障害され就労や日常生活が困難になるとともに、内臓にも障害を来し、寿命を短くしうる疾患です。
病気の診断には、主に触診による関節の炎症所見(腫れや圧痛)の検出が最も重要で、また血液検査で抗CCP抗体やリウマチ因子、炎症反応陽性、6週間以上症状が持続していることの有無と併せて診断します。また関節破壊については、通常行うレントゲン検査による評価に加えて、必要に応じて超音波やMRI検査によってより詳細な評価を実施しています。
関節リウマチで問題となる関節構造の破壊が進行してしまうと、残念ながら現在の医療技術では関節を元の状態に戻すことはできないため、破壊が進む前に、しっかりと炎症を抑えることが治療の成功のカギとなります。すなわち発症早期からの治療が極めて重要です。
また、早期診断後、速やかに薬の治療が開始されていても、それが不十分な治療であった場合、関節破壊が進行しうるため、十分に病気を抑えているかどうかを見極める必要があります。リウマチにおいて病気の勢いを評価する上で、患者さんの自覚症状もさることながら、触診による関節所見が最も重要です。血液検査で炎症反応などが正常化していても、病気の進行が十分に抑えられていないころはしばしばありますので、炎症反応などが正常化していればよいというものではありません。特に炎症が強く、リウマチを示唆する所見がたくさん現れていて、診断が比較的容易についた患者さんほど、関節破壊が進行しやすいので注意が必要です。
昨今の免疫・炎症学、バイオテクノロジーの進歩により、極めて有効な治療薬(メトトレキサートなどの抗リウマチ薬、生物学的製剤など)が、臨床の現場で使用されるようになり、現在の治療目標は、それらの薬を適切に使うことによって、ほとんど症状のない状態、関節破壊が進まない状態(いわゆる寛解)を目指し維持することとなっています。一方で、生物学的製剤などの新規治療薬の最大の問題点は、その高価な薬剤費負担であり、患者さん個人にとっては、それらの使用をためらう最も大きな理由の一つとなっており、社会全体ではリウマチ医療費の増大につながっています。
当科では、2007年5月から早期リウマチ外来(現 早期関節炎外来)を開設し、関節リウマチなどの関節炎疾患の早期診断・積極的治療に取り組み、上記の目標を大多数の患者さんで達成しています。上記目標の達成には、約4割の患者さんで高価な生物学的製剤の併用が必要になりますが、多くの患者さんで数年間使用し、しっかりと病気の勢いを抑えた後、生物学的製剤を休薬する試みを行い、60%以上の方が、1年以上生物学的製剤を使用しなくても寛解状態が維持できたことを報告しています。
また少数ですが薬が全く不要になる方もおられます。比較的安価な治療で、安全に寛解状態を維持することを目標に、リウマチの診療に取り組んでいます。
膠原病に伴う難治性臓器障害に対して、
免疫学・炎症学の基本的知識に基づいた最先端の治療法を積極的に試みています
関節リウマチ以外の膠原病は、当診療科において扱う主な疾患の項で提示したようなものがあり、10万人あたり1人以下から100人程度の疾患まで、比較的患者さんの数が少ない疾患が多数含まれます。
いずれも筋骨格系のみならず皮膚、肺、腎、眼、耳鼻咽喉、消化器、心臓、血液、神経など、しばしば全身の諸臓器に障害を来しうる全身性疾患です。この範疇の疾患は比較的稀であり、臓器横断的な多彩な症状で発症しうるため、的確な病態診断および治療において専門的な知識と臨床経験が必要とされます。
また、これらの疾患ではしばしば副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬などが使用され、多くの場合、それらの薬剤の適切な使用により疾患活動性が安定化するものの、長期にわたる治療が必要となるため、種々の副作用、合併症の全身的管理も非常に重要です。中でも副腎皮質ステロイド薬を大量に使用した場合に起こりうる非可逆的な副作用を避けるため、積極的に免疫抑制薬を併用し、ステロイド薬の総使用量を減らすことを心がけています。
またこれらの免疫を強力に抑える治療中は、感染症にかかりやすくなり、またかかった場合にはしばしば重症化するため、適切な予防、早期の的確な診断、治療が必要です。また私たちは、患者教育により病気の再燃や副作用出現の早期発見および生活指導や補助的な薬物療法による副作用予防などに力を入れて日常診療にあたっています。
病診連携により、リウマチ・膠原病専門診療の医療資源を
適切に供給できるようご協力をお願いします
リウマチ内科・膠原病内科を標榜し、その診療を専門で行っている診療科がある病院は、東海地区ではあまり多くありません。このため多くの基幹病院から当科へご紹介を頂いており、遠方も含め多くの患者さんが通院されている現状があります。また一方でリウマチ・膠原病は、長期間の治療、経過観察を要する疾患です。診療の供給体制の面から、受診された全ての患者さんの長期経過を当科で診ていくことは、残念ながら現状では不可能な状態です。
診断未確定の場合や病気の活動性が高い時は、入院での検査・治療や、頻回の(2~4週に1回)外来受診が必要となりますが、安定すれば徐々に受診間隔が延び、3ヶ月に一回程度の診察となります。
また病態の活動性が低く安定している患者さんや、当初は病態の活動性が高くても、治療目標に到達し、また私共が安定した状態にあると判断した患者さんにおかれましては、これまでの経過や治療管理方針を記載した紹介状とともに近隣の医療機関への紹介転院を、担当医よりご提案させて頂く場合がありますので、その際には、ご協力いただきますよう宜しくお願いします。
臨床研究や治験へのご協力をお願いします
関節リウマチなどにおいて、治療薬開発に関わる治験や、多施設共同の医師主導研究、当科主導の観察研究や治療研究などを実施しています。患者さんにおかれましては、治験や臨床研究の趣意につきましてご理解いただき、参加頂きますようご協力をお願いいたします。
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