喘息、慢性咳嗽の病態解明と効果的な治療の確立を目指した研究
スパイロメトリーなどの一般的な検査の他、呼気NO(一酸化窒素)濃度測定、IOS(強制オッシレーション法)、気道可逆性試験、気道過敏性検査、カプサイシン咳感受性検査、誘発喀痰検査といった最新の検査法を駆使して、喘息、慢性咳嗽(咳喘息、胃食道逆流症など)、COPDなどの慢性気道疾患の病態解析、診断方法や新規バイオマーカーの確立などについて研究を進めています。難治性の喘息による咳に対する新たな治療法の有効性検証、胃食道逆流症による慢性咳嗽のメカニズムの解析(消化器内科との共同研究)などが進行中です。消化器内科とは、機能性消化管疾患が重症喘息の病態に及ぼす影響についても研究を共同で実施しています。また機能組織学との共同研究では肺線維芽細胞を用いて非神経性TRPチャネルの機能解析を行っており、非神経性TRPチャネルが喘息などの慢性呼吸器疾患の病態に及ぼす影響についての基礎研究に取り組んでいます。
喘息・慢性咳嗽における呼気中一酸化窒素濃度測定の研究
喘息・咳喘息では、呼気NO濃度が上昇する事が知られています。当グループでは呼気NO濃度測定と上記検査を組み合わせることが喘息・慢性咳嗽の診断・治療にどのように役立つかを検討しています。また呼気NO濃度の末梢気道成分(肺の奥から産生されるNO)の測定から喘息の吸入ステロイド治療の効果を予測できる可能性について、呼気NOの末梢気道成分濃度と喘息の病態の関係に遺伝子が関連しているかについても調べています。鼻炎・副鼻腔炎合併喘息の研究
喘息ではアレルギー性鼻炎・慢性副鼻腔炎などの鼻疾患を合併することが多く、喘息の診療において鼻疾患の評価や治療は重要です。 近年、鼻疾患の治療が喘息コントロールの改善にもつながることも報告されています。当グループではこれまでに耳鼻咽喉科と共同で喘息に合併する鼻炎・副鼻腔炎の診断や評価における呼気・鼻腔NO濃度測定や血清マーカーの有用性、副鼻腔炎の存在や治療が喘息の病態に及ぼす影響を報告しました。現在、同病態における生物学的製剤の有効性につき、耳鼻咽喉科と共同研究を行っております。
吸入療法におけるアドヒアランスの研究
吸入療法は、喘息やCOPDの薬物治療の中心的存在ですが、内服薬にくらべ服薬遵守率が低いことや吸入手技の誤操作が多いことが十分な治療効果を挙げる妨げになっています。 このような吸入治療アドヒアランスの低下を招く要因について関連施設と連携して調査研究を行い、並行して医師、病院薬剤師、地域薬剤師と協力しながら地域レベルでのアドヒアランス向上に取り組んでいます(名古屋吸入指導ネットワーク)。
重症喘息に対する生物学的製剤の有効性に関する研究
長期管理薬の普及と進歩により喘息コントロールは著明に改善しましたが、一部の重症例では治療や管理に難渋します。近年、重症例において生物学的製剤の使用が承認され、臨床効果が報告されていますが、喘息病態への効果や有効性予測因子など不明な点も多くあります。当グループでは関連施設と連携し、耳鼻咽喉科および放射線科と共同して重症喘息例における生物学的製剤の有効性を包括的に調べています。
上記のほかにも、他施設と共同で様々な臨床研究を実施し、喘息、慢性咳嗽の病態解明に取り組んでいます。
抗癌剤耐性機序の基礎研究
薬剤排泄ポンプ ATP-binding cassette (ABC)蛋白による細胞内有効薬剤蓄積量の減少は、抗癌剤耐性に大きく関わっており、我々はこのABC薬剤輸送蛋白を中心に、細胞内薬剤代謝と薬剤耐性機序の解明を行っています。
肺癌治療標的分子の解明とその効果的な治療法の確立を目指した研究
近年、EGFR、ALK、ROS1などを標的とした治療薬が肺癌臨床に用いられています。当グループも肺癌治療成績の向上を目指して、新たな治療標的分子の解明と、分子標的治療薬の作用機序についての研究を進行中です。
抗癌剤感受性や副作用に関連する遺伝子多型についての検討
抗癌剤の感受性や副作用が、患者の遺伝子多型によって予測できる可能性を、臨床検体を用いて検討しています。
肺癌患者の緩和医療における臨床研究
肺癌患者に対する早期からの緩和医療は、QOLを改善するのみでなく生存期間も延長する可能性があることが示されています。当グループも、より効果的な緩和医療の構築を目指し、臨床研究を進めています。
非結核性抗酸菌症の病態解明についての研究
1. Mycobacterium avium complex(MAC)のフルオロキノロン薬に対する薬剤感受性に関する全国調査(日本結核病学会)
本調査のプロトコール作成に関わり、新規に診断された肺MAC症患者由来のMAC菌のフルオロキノロン薬を含む薬剤感受性と患者背景因子について検討しています。
2. MAC症の感染経路に関する研究
環境常在菌であるMACを自宅から分離して、感染経路やその危険因子などMAC症発症に関する病態解明に取り組んでいます。
抗菌化学療法に関する研究
抗菌化学療法に関する基礎的研究として下記の研究に参加、実施しています。
1.臨床分離菌の薬剤感受性に関する多施設共同研究
呼吸器感染症原因菌の薬剤感受性(三学会合同抗菌薬感受性サーベイランス)
2.抗菌薬関連腸炎に関する研究
1)Clostridium difficile毒素遺伝子検出能の基礎的評価
2)C.difficile感染症,医療関連感染に関する研究
慢性間質性肺炎の動物モデルにおける抗線維化薬の作用機序に関する研究
本大学の基礎医学教室と共同研究を行っています。世界的にも貴重な慢性間質性肺炎を呈する動物モデル(マウス)に抗線維化薬を内服させて、その作用機序の解明のための研究を行っています。
特発性肺線維症の臨床指標と身体活動性の関連に関する研究
3軸加速器計内蔵の歩数計を用いて、特発性肺線維症の患者さんの1日あたりの平均歩数を測定します。1日平均歩数が、病院内での6分間歩行テスト、肺機能検査、質問票、CTで測定した筋量の結果、精密体組成計で測定した筋肉量の結果、血中の栄養指標(血清プレアルブミン値)と、統計学的に関係があるかを調べています。
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